☆NY通信

NY通信最新号が届きました!

Merry Christmas! でも今年は、クリスマス・パーティーも忘年会もありません。 今は、アメリカも日本も我慢の時ですね。 

 今年も、米語Watchを読んで頂いてありがとうございました。 お会いすることが難しい中、本当に多くの皆様からメッセージをいただくことで、厳しい2020年を乗り越えることができたように思います。

 「週刊NY生活」新年号に掲載予定の記事「米語 Watchで振り返る2020年」をお送りします。 

 新年が皆様一人ひとりにとって、素晴らしい年でありますように!

米語Watch」で振り返る2020年

 新型コロナのパンデミックと大統領選挙で明け暮れたアメリカの2020年は、Unprecedented(未曾有)の1年だったとして記憶されるでしょう。 コラム「米語Watch」で暮れゆく2020年を振り返ってみましょう。

 3月の初め Black Swan(大きな悪影響を与える、想定外の大規模事象)を取り上げた時、年末においてアメリカのコロナ死亡者が32万人以上に達すると誰が予想したでしょうか。 Outbreak(爆発感染)、 Community Spread(市中感染)、 Airborne Transmission(空気感染)とウイルスは広がり続けました。この事態に対して、連邦政府も多くの州政府も有効な対策を示すことができず、その指導力の欠如がCovidiot(コロナ馬鹿)と称される無責任な人たちを多く生み出し、さらに状況を悪化させてしまったのです。 アメリカでの感染者が1800万人を超える中、 Long-hauler (回復してもコロナ後遺症で苦しむ人)が多数いることも判明しました。 12月になって承認されたワクチンにより、新年には事態が好転することが期待されています。 しかし、ワクチンが行き渡るまで、我々はCabin Fever(巣ごもりイライラ症)を乗り越えて、Mask-wearing, Social Distancingを徹底しなくてはなりません。同時にAnti-vaxxer(ワクチン反対論者) とその影響を受けた多くの国民にも説得性のある対応が必要です。1日のコロナ死者が3000人に迫る事態は、一刻も猶予が許されない未曾有の悲劇です。

 2020年は大統領選挙の年でした。バイデン氏が民主党の候補となった後の焦点は Veepstakes (副大統領候補の選任プロセス)でした。黒人でインド系女性のカマラ・ハリス氏を選んだことが結果として吉と出ました。一方、トランプ政権の大統領選への取り組みには、進歩派のメディアから批判が噴出しました。 トランプ氏のLaw & Order(法と秩序)メッセージは郊外に住む白人女性へむけたマイノリティー排除の Dog Whistle (暗号メッセージ) ではないかと言う指摘、あるいは郵便投票などに疑問を投げかけたのは利己的な Voter Suppression (投票人抑制)だと言う批判です。終盤にはトランプ氏個人を攻撃する多くの Tell-all (暴露本)が出版され、選挙戦は異様な展開となりました。最終的に、一般投票数においても選挙人票にもおいても明確に敗退したトランプ氏ですが、本人はそれをまだ認めようとはしません。何の証拠も示さず選挙がRig(不正操作)されたと主張するのは、Sore Loser(負けを潔く認められない往生際が悪い人)と言わざるを得ないでしょう。 大統領選挙の混乱は、アメリカの民主主義の脆弱さをあぶり出しました。各州の 選挙制度の違い、選挙委員会の中立性への疑問、選挙人制度そのものの妥当性、政権移行(Transition)の混乱・・・これから先、これら全てを俎上に乗せることで、アメリカには真の民主主義の旗手としての矜恃を示してもらいたいと思います。

 大統領選挙の過程で、アメリカの分断があらわになりました。 特に、ミネアポリスで黒人ジョージ・フロイド氏が、警官に無残に殺害されたことに抗議するBlack Lives Matter運動は、アメリカ社会が内包する人種問題を浮き彫りにしました。 抗議運動において、 Defund the Police!(警察に予算をつけるな!)が大きな標語となりましたが、これは進歩派と保守派の相容れない対立軸となりました。 加えて、セントラル・パークで鳥を観察していた黒人が白人女性に犬に首輪をするように依頼したことで、警察に通報されてしまったような ~ing while Black(黒人であるというだけで、不当な扱いを受ける)、 “Karen” (特権的な態度で人を見下す白人女性)、 Cancel Culture  (人のことを一方的に切り捨てる風潮)も、2020年の断裂した社会を象徴する米語となりました。

 そして新年2021年を迎える今、分断を癒し全国民のための大統領になると宣言するバイデン氏が大統領に就任します。その道は容易ではないでしょう。それでも、新大統領の豊富な政治経験と誠実な指導力のもと、この国が、すべての人々に平等の機会を提供するというアメリカ魂を取り戻してくれることを心から祈りたいと思います。 
(旦 英夫 ニューヨーク州弁護士)