☆NY通信 Critical Race Theory

NY通信、最新号が届きました!

米語 Watch [216] : Critical Race Theory  各位、  マンハッタンの五番街は恒例のクリスマス・ツリーを見る人々で賑やかです。パンデミックを心配しながらも、今年は皆でクリスマスを祝いたいというのがアメリカ人の気持ちです。 それは日本でも同じでしょうね。 コラム「米語Watch」をお送りします。 -米語Watch(朝日Weeklyおよび週刊NY生活紙に連載中)-

Critical Race Theory 歴史的枠組みに基づく批判的人種論  米国の分断された社会に繰り広げられる 、進歩派と保守派の間のCulture War(文化戦争)において、象徴的な意味を持つ言葉がCritical Race Theory(略してCRT、批判的人種論)です。 CRTは、1970年代に端を発する論考で、今なお続く白人による黒人への差別は個人的な偏見から来るというより、歴史的な社会構造・枠組みの所産であるとする考えを強調します。  これを受けて民主党を中心とする進歩派は、奴隷制の始まりや展開、解放後の黒人に対する差別的な制度などの歴史的事実を、米史の負の側面として子供達に正確に教えることが重要と考えます。 一方、共和党を代表する保守派の論客は、そのようなCRTは歴史を不当に扱うものであり、子供達(特に白人の)に不快な感情を抱かせるだけでなく、人種間の対立をあおるプログラムだと、主張します。その主張は白人の親たちに支持され、南部を中心にいくつかの州では、CRTやそれに準拠する授業を禁止する法律を成立させました。  このCRTについての教育論争が、民主党と共和党の熾烈な政治の戦いに持ち込まれ、来年に迫る中間選挙に大きな影響と与えると見られています。 今、Critical Race Theoryは米国の分断を理解するためのキーワードの一つになって来ました。 (旦 英夫 ニューヨーク州弁護士)